endless pain (5ds鬼柳夢)

※5ds鬼柳さん夢。
当時は名前変換機能をつけていましたができなくなっちゃったのでデフォルトネーム(和花)で失礼します。




「わたし、死んだら地獄に堕ちるの」
 和花はときどき、不吉で不可解なことを口にする女だった。俺が知るかぎりでは和花は地獄に堕ちるような悪事を働いたことはなかった。そんなもの信じちゃあいないが、万が一地獄に堕とされるならば俺の方が適当だ。
「和花が何の罪を犯したよ?」
「人を憎み、怨み、呪いながら生きることは罪に値するわ。汚れた魂は重くてどんどん堕ちていくのよ」
 そんなもの、誰だって同じだろう?そう問えば和花は違うのだと言った。だからこの問題は俺の理解を越えているのだと諦めるしかなかった。はいはい解ったお前は罪人だよ、とでも言ってやれば良いのかもしれないが、生憎それをすれば自分自身が罪深いことまでを認めてしまうことになる。それは、どうも気分が悪かった。
 代わりに、地面を見つめて下を向いてしまった頭をくしゃくしゃと撫でた。こんなやつだけれど和花には安心して生きて欲しいと思った。誰よりも。
「でも裁かれるならまだいいのかもしれない」
 それでも、いつだって俺の願いは伝わらなかった。俺が埋めようとする部分と和花が埋めて欲しい部分は食い違っていた。平たく言えば、理解ができなかった。
「本当に苦しいのは、死してなお罪を重ねなければならないことよ」
「なんだよ、それ」
 死者が罪を重ねる?動かすことのできない肉体で何をするんだよ。なあ、和花。もう止めろよ。
「あるのよ。そういう世界が」
 突飛な台詞を見てきたかのように話す和花に、恐怖を覚えた。死はおまえを許さないというのか。
 肩を抱き寄せ、和花がこれ以上おかしなことを口走らないように、それだけを祈った。和花にはこの世界をちゃんと生きてほしかった。それだけだった。


081228に個人サイトに掲載

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